TANS 炭素

業種別にみるScope3の構造 — 526社から読む「自社の型」

最終更新

TANSOに収録した526社のScope1・2・3データを業種ごとに集計すると、Scope3の「重心」が業種によってはっきり違うことが見えてきます。この記事では、Scope3比率と最大カテゴリの分布から日本企業を4つの型に分け、業種別の表で自社の位置を確認できるようにしました。あわせて、開示の深さ(カテゴリ数)の実態と、型ごとに効く削減施策・社内の依頼先まで整理します。自社の算定計画や削減計画を「同業の相場」と照らして点検する材料にしてください。

全体像 — 526社のScope3はどう分布しているか

2026年9月時点のTANSOデータベースには526社を収録し、そのうちScope3を開示しているのが476社、カテゴリ別の内訳まで開示しているのが430社です。総排出量(Scope1+2+3)に占めるScope3の割合の中央値は93.3%で、典型的な日本の上場企業では自社の直接・間接排出(Scope1・2)は全体の1割に満たないことになります。SBT認定を取得しているのは196社(37%)です。

カテゴリ内訳のある430社について「最も大きいカテゴリ」を集計すると、Cat.1(購入した製品・サービス)が253社、Cat.11(販売した製品の使用)が120社で、この2つで全体の大半を占めます。続いてCat.15(投資)が22社、Cat.3(燃料・エネルギー関連活動)が15社、Cat.2(資本財)が10社、Cat.4(輸送・配送/上流)が9社です。つまり日本企業のScope3は「買ったもの」か「売ったものの使用」のどちらかに重心があり、それ以外が最大になるのは金融・エネルギーなど限られた業種です。各カテゴリの定義は15カテゴリの全体像を、企業別のランキングはCat.1・Cat.11のページを参照してください。

Scope3の4つの型

「Scope3比率」と「最大カテゴリ」の2軸で業種を見ると、次の4つの型に整理できます。

①調達型 — Cat.1が最大

食品・化学・小売・医薬品・電気機器など、原材料や商品を大量に購入する業種です。食品は38社中34社、医薬品は18社中17社、化学は43社中35社でCat.1が最大カテゴリでした。排出の重心はサプライヤー側にあり、削減は「何をどこから買うか」の問題になります。

②製品使用型 — Cat.11が最大

建設・機械・輸送用機器・ガス、そして重工系のメーカーがここに入ります。建設は34社中21社、機械は29社中20社、輸送用機器は21社中13社、ガスは7社すべてでCat.11が最大です。自社が売った建物・設備・車両・燃料が顧客の手元で長年にわたって使われ、その間のエネルギー消費が自社のScope3として計上されます。Scope3比率の中央値は建設97.6%、機械99.0%、輸送用機器98.5%と、どれも極めて高い水準です。

③投融資型 — Cat.15が最大

銀行・保険・証券などの金融業です。銀行・金融13社のうち10社でCat.15が最大、Scope3比率の中央値は98.9%でした。自社のオフィスの排出はごく小さく、融資先・投資先の排出(ファイナンスド・エミッション)がほぼすべてを占めます。企業別の数値はCat.15ランキングで確認できます。

④自社排出型 — Scope3比率が低い

電力・鉄鋼・ガラス・土石・パルプ・紙・海運・空運のように、自社の燃焼やプロセスからの排出(Scope1)が大きい業種です。Scope3比率の中央値は電力43.9%、鉄鋼63.8%、ガラス・土石53.1%、パルプ・紙54.1%、海運39.9%、空運22.1%と、他の型とは水準がまったく違います。特徴的なのは電力で、12社中10社の最大カテゴリがCat.3(燃料・エネルギー関連活動)でした。燃料の採掘・輸送や購入電力の送配電ロスなど、エネルギー供給の上流が大きいためです。鉄鋼・ガラス・土石・パルプ・紙では最大カテゴリはCat.1ですが、Scope1が総量の半分前後を占める点で、①の調達型とは性格が異なります。

業種別の一覧

主要業種について、社数・Scope3比率の中央値・最大カテゴリの最頻値(該当社数)・SBT認定数を示します。すべての業種は業種別ページで確認できます。

業種社数Scope3比率中央値最大カテゴリ(社数)SBT認定
電気機器4796.6%Cat.1(24)34
化学4376.8%Cat.1(35)10
食品3891.5%Cat.1(34)14
建設3497.6%Cat.11(21)26
小売3094.3%Cat.1(20)7
機械2999.0%Cat.11(20)13
輸送用機器2198.5%Cat.11(13)9
医薬品1890.1%Cat.1(17)9
鉄鋼1763.8%Cat.1(9)0
銀行・金融1398.9%Cat.15(10)1
電力1243.9%Cat.3(10)0
ガス797.4%Cat.11(7)0

表からは2つのことが読み取れます。第一に、SBT認定の取得率は業種で大きく偏っていることです。電気機器は47社中34社、建設は34社中26社が認定済みである一方、鉄鋼・電力・ガスはゼロです。自社排出型の業種はScope1の削減が大型の設備投資と直結するため、目標のコミットに時間がかかっている構図です。第二に、電気機器はCat.1が最大の企業が47社中24社にとどまり、残りは製品構成によって別のカテゴリが最大になっています。同じ業種でも、エネルギーを消費する製品を多く売る企業は製品使用型に寄ります。SBT認定企業の一覧はSBTページで確認できます。

開示の深さ — 何カテゴリまで出しているか

カテゴリ内訳を開示している企業について、開示しているカテゴリ数の中央値は9でした。15カテゴリのうち13以上を開示しているのは20社にとどまり、逆に5以下しか開示していない企業が55社あります。多くの企業は「主要な上流カテゴリ+使用段階」という構成で、下流の一部や特殊なカテゴリを「該当なし」または「未算定」としています。

カテゴリ別の開示社数を見ると、偏りがさらに鮮明になります。

Cat.8やCat.14の少なさは、多くの企業でリース資産をScope1・2に含めていたり、フランチャイズ事業がなかったりするためで、必ずしも算定の怠慢ではありません。一方でCat.9とCat.10は「顧客側の物流・加工」であり、データが取りにくいために未算定のままになっている企業が多いと推測されます。自社が「該当なし」としているカテゴリについて理由を説明できるかどうかは、開示の信頼性を左右するポイントです。

自社の型の見つけ方

  1. Scope3比率を計算する — Scope3 ÷(Scope1+Scope2+Scope3)で求めます。中央値の93.3%より大きく低ければ自社排出型の可能性が高く、Scope1・2の削減が最優先になります
  2. 最大カテゴリを特定する — Cat.1ならば調達型、Cat.11ならば製品使用型、Cat.15ならば投融資型です。まだ内訳を算定していない場合は、購入金額の大きさと、製品がエネルギーを消費するかどうかで当たりをつけます
  3. 同業と比較する — 業種別ページで同業のScope3比率と最大カテゴリを見て、自社が同じ型か、それとも例外的な構成かを確認します。同じ業種でも製品構成で型が変わることは電気機器の例のとおりです
  4. 開示カテゴリ数を数える — 中央値の9を目安に、自社が「未算定」としているカテゴリを列挙し、該当なしと言い切れるか、推計でも出すべきかを仕分けます

より詳しい分析の切り口はデータ分析ページにまとめています。

型ごとに効く削減施策と依頼先

集計を読むときの注意

この集計は各社の最新開示をベースにしており、対象年度・算定バウンダリ(連結範囲、対象カテゴリ)は企業ごとに異なります。Scope3比率が低い企業には、Scope1が大きい企業と、Scope3の一部カテゴリしか算定していない企業の両方が含まれます。また最大カテゴリの判定はカテゴリ内訳を開示している430社に限られ、業種の分類もTANSO独自のものです。個社の数値を引用するときは、必ず各社の最新開示原本で年度とバウンダリを確認してください。

ポイント: 日本企業のScope3は総排出の9割超を占め、最大カテゴリはCat.1(253社)かCat.11(120社)に集中する。業種は調達型・製品使用型・投融資型・自社排出型の4つに分かれ、型によって削減の打ち手と社内の依頼先が変わる。開示カテゴリ数の中央値は9で、Cat.8・Cat.14などは開示が少ない。自社の型を業種別ページで確認し、算定の優先順位と削減計画を組み立てる。
本記事は公的資料・一次情報に基づいています。実務では最新の基準をご確認ください。

この記事に関係する排出原単位(環境省DB)

環境省の排出原単位データベースを、Excelを開かずに検索・比較できるよう再構成したページです。

自社への影響が見えてきたら、次は現在地の把握。

12問・3分・登録不要のGHG対応度診断。結果画面で「次にやるべきこと」を提示します。

3分 Scope3対応度診断