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サプライヤーへGHGデータを依頼する方法(メール文例付き)

最終更新

Scope3の精度を上げる本命は、サプライヤーからの一次データ取得です(一次・二次の違いはこちら)。しかし初回の依頼を間違えると「面倒な取引先」認定され、以後の協力が得にくくなります。本記事では、依頼前の社内準備から、対象の選び方、そのまま使える3パターンのメール文例、回答様式の項目リスト、サプライヤーからのよくある質問への回答例までを一気通貫で整理します。

依頼の前に — 社内準備が半分を決める

依頼の成否は、メールを送る前にかなり決まっています。特に重要なのが購買部門との連携です。

対象サプライヤーの選び方

全取引先への一斉送付は悪手です。回収率が下がるだけでなく、フォローが回らず関係構築になりません。初年度は10〜20社に絞るのが現実的です。選定は次の3条件の掛け合わせで行います。

  1. 推計排出量が大きい — 調達金額ではなく、金額×原単位で並べ替える。原単位の大きい原材料(金属・油脂・乳製品・樹脂など)は金額順位より上に来ます
  2. 関係が深い — 取引年数が長い、取引額に占める自社比率が高い、定期的な商談がある
  3. 協力が見込める — 上場企業や統合報告書でGHG開示をしている企業は算定済みの可能性が高く、初年度の成功体験を作りやすい

この3条件で選ぶと「確実に返してくれる層」と「排出量は大きいが未算定の層」が混ざります。それで構いません。前者で回収の仕組みを作り、後者とは複数年かけた関係構築を始める、という二段構えです。

依頼の5原則

メール文例1: 初回依頼

件名: 【ご協力のお願い】温室効果ガス排出量データのご提供について

◯◯株式会社 ◯◯様

平素より大変お世話になっております。◯◯株式会社 調達部の◯◯です。

当社はサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope3)の算定に取り組んでおり、主要なお取引先様に排出量データのご提供をお願いしております。本依頼は取引条件の評価を目的とするものではなく、当社の算定精度向上と、将来的な削減のご相談の基礎とさせていただくものです。

つきましては、添付の回答様式にて以下をご教示いただけますと幸いです。
1. 貴社全体のScope1・Scope2排出量(直近年度・算定済みの場合)
2. 算定がまだの場合は、その旨のご回答で結構です

ご提供いただいたデータは当社Scope3算定の目的にのみ使用し、第三者への開示はいたしません。算定がこれからという場合には、当社で使用している算定手順のご紹介も可能です。

ご多忙のところ恐縮ですが、◯月◯日までにご回答いただけますと幸いです。

メール文例2: リマインド(期限1週間前〜期限後)

リマインドは催促ではなく障害の除去と位置づけます。「まだですか」ではなく「どこで止まっていますか」を聞きます。

件名: 【再送・◯月◯日期限】排出量データご提供のお願い(ご不明点はお気軽に)

◯◯株式会社 ◯◯様

先日お送りした排出量データご提供のお願いについて、期限が近づいて参りましたのでご連絡いたしました。既にご対応中でしたら行き違いをご容赦ください。

もし「どの数字を書けばよいか分からない」「社内のどの部署に確認すべきか迷っている」といった点でお手が止まっているようでしたら、遠慮なくお知らせください。お電話やオンラインで15分ほどご説明する形でも対応可能です。

また、現時点で算定されていない場合は、様式の「未算定」欄に印をつけてご返送いただくだけで結構です。それも当社にとって重要な情報となります。

お忙しいところ恐れ入りますが、どうぞよろしくお願いいたします。

ポイントは「未算定と返すだけでよい」と再度明示することです。未算定企業の多くは「答えられないから返信しない」だけであり、この一文で回収率が目に見えて変わります。

メール文例3: 未算定企業向けフォロー

「未算定」と回答してくれた企業には、責めずに支援を提示します。翌年以降の一次データ供給元を育てるフェーズです。

件名: ご回答ありがとうございました/算定をご検討の際のご案内

◯◯株式会社 ◯◯様

このたびは排出量データに関する調査にご回答いただき、誠にありがとうございました。現時点で未算定とのこと、承知いたしました。ご回答いただけたこと自体が当社にとって大変有益であり、今回のご回答が貴社との取引に影響することは一切ございません。

今後、算定をご検討される場合に向けて、当社では以下のご支援をご用意しております。
1. Scope1・2算定の手順資料(当社が実際に使用しているもの)のご提供
2. お取引先様向けオンライン勉強会(年2回開催・無料)のご案内
3. 初回算定に関する個別のご相談(30分程度)

Scope1・2の算定は、燃料と電気の使用量が分かれば小規模な体制でも着手可能です。ご興味がございましたら、上記いずれでもお気軽にお申し付けください。来年度も同様のお願いをさせていただく予定ですので、その際に改めてご相談できれば幸いです。

回答様式に入れる項目リスト

様式はExcel1枚、入力セルは色分けし、記入例の行を必ず入れます。初回依頼で入れる項目は次の通りです。

初年度に売上高や当社向け売上比率まで聞くかは判断が分かれますが、按分計算に必要な場合は「差し支えない範囲で」と明記して任意項目にするのが穏当です。

よくある質問と回答例

サプライヤーからの質問回答例
回答しないと取引に影響しますか「影響しません。本依頼は当社の算定精度向上が目的で、回答の有無・内容を取引条件の評価に使うことはありません」— 購買部門と合意済みの方針をそのまま伝える
データはどこまで共有されますか「当社の算定担当部署のみで使用し、貴社名つきの数値を外部に開示することはありません。開示物に含まれるのは全サプライヤー合算後の数値のみです」
なぜ会社全体の数字なのですか。当社向け製品分だけでは「製品別の算定はご負担が大きいため、初回は会社全体の実績で十分です。当社側で取引額等に基づき按分して使用します」
算定していないので回答できません「未算定という回答で全く問題ありません。ご希望があれば算定手順の資料を提供します」
毎年依頼が来るのですか「年1回、同じ様式でお願いする予定です。前年の回答を転記した様式をお送りしますので、2回目以降は差分の更新のみで済みます」
他社からも同様の依頼が来て様式がばらばらで困っています「業界共通の枠組みやCDPの回答をお持ちであれば、その転記・流用で構いません」— 相手の重複負担を減らす姿勢を示す

スケジュールと回収率の目安

依頼から反映までは、社内準備1〜2か月、回答期限は送付から1か月、リマインドとフォローに1か月、検算と算定反映に1〜2か月で、全体で4〜6か月を見ておくと無理がありません。自社の算定・開示スケジュールから逆算し、繁忙期に回収のピークが重ならないよう送付時期を決めます。回収率は、上記の3条件で対象を絞り、購買連名+リマインドまで行った場合で7〜8割が現実的な目安です(未算定という回答も回収に数えます)。一斉送付型の調査では回収率が大きく下がるのが通例で、初年度に低い回収率の「実績」を作ってしまうと社内の期待値管理も難しくなります。

回収後にやること

ポイント: 一次データ取得は「調査」ではなく「関係構築」。送る前に購買部門と方針を固め、対象は3条件で10〜20社に絞る。初回は軽く、リマインドは障害除去、未算定企業には支援を。様式と想定問答まで用意してから送る。
本記事は公的資料・一次情報に基づいています。実務では最新の基準をご確認ください。

この記事に関係する排出原単位(環境省DB)

環境省の排出原単位データベースを、Excelを開かずに検索・比較できるよう再構成したページです。

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